妊婦健診や出生前検査のときに医療者が頻繁に使う用語をまとめました。
正確性よりも理解のしやすさを優先しています。
あ行
- 異形成
- 皮膚、骨、その他の組織の発達に異常が認められることを意味します。
- 遺伝カウンセリング
-
「遺伝科」や「遺伝診療科」などで、遺伝カウンセリングを受けられます。全ての病院にあるものではなく、大学病院などの大きな病院にあります。
詳細はこちら(日本遺伝カウンセリング学会ホームページ)
- 遺伝子
- タンパク質を作り出すのに用いられる機能的DNA。個々の特徴を片方、もしくは両方の親から子どもへ伝える染色体内の単位を指します。
- 遺伝性
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世代を越えて、家族内での特徴や性質が受け継がれていくこと。
※遺伝子の変異があっても、必ずしも遺伝するものではありません。
- 医療的ケア
- 「医療的ケア」とは、一般的に学校や在宅等で日常的に行われている、たんの吸引・経管栄養・気管切開部の衛生管理などの医行為を指します。
- 横隔膜ヘルニア
- 胸とお腹を隔てる膜(横隔膜)に穴があること。腸や肝臓などが胸の位置に押しあがってくると、赤ちゃんの肺の発達に影響がでることがあります。
か行
- 核型
- 46XYといった細胞あるいは個人の染色体構成。羊水検査や絨毛検査などの侵襲的検査でわかります。最近ではNIPTなどの方法で、母体血から胎児の核型をある程度正確に判断することもできます。
- 奇形
- 身体のどこかの形が、大多数の場合とは異なる特徴を持つことを意味します。必ずしも「異常」や「病気」ではありません。
- 狭窄
- 血管や腸、心臓の弁などが異常に狭くなってしまった状態。
- 欠失
- 染色体上の遺伝情報の一部が欠けていること。
- 〇〇欠損
- なにかが完全にないことを意味します。例えば、脳梁欠損というときは、大脳の二つの半球を繋ぐ部分が完全にないことを意味します。腎欠損というときは、腎臓が完全にないことを指します。
- 骨◯◯(骨性◯◯)
- 骨に関わる用語の接頭語。例 骨粗鬆症 – 骨密度の減少によって骨が脆弱になる病気。
- 骨盤位
- 赤ちゃんの頭が上にある状態のこと。特に出産のときにおしりから出てくる場合を臀位(でんい)、足から出てくる足位(そくい)、ひざから出てくる膝位(しつい)といいます。
さ行
- 臍〇〇
- 臍や臍帯に関わる言葉の接頭語。
- 産科
- 妊娠、出産、そして産後6~8週間(生殖器系の器官が再生する期間)扱う臨床部門。
- 三倍体(トリプロイディー)
- 染色体が、通常の2セットではなく3セットある状態。
- 子宮内発育遅延(Fetal growth restriction; FGR )
- 妊娠週数に比べて胎児が異常に小さい状態。
- シャント
- 血液やその他の液体を、体のある場所から違う場所へ流すために手術で埋め込まれた管のこと。例えば、水頭症に対して、脳室から腹腔へ脳脊髄液を流すためにシャントが置かれることがあります。赤ちゃんの胸に液体が溜まっているときに、その液体を胸の外に出すためにシャントを置くこともあります。
- 循環器科
- 心臓の専門領域のこと。心臓病を疑うときなどには、小児循環器の専門家が診察することがあります。
- 症候群
- 疾患と考えられる複数の症状や徴候の組み合わせ。
- 常染色体
- 染色体のうち、性別を決める性染色体以外のものを指します。
- 常染色体優性遺伝の疾患
- 変異した遺伝子が1つでもあった場合に、症状がでるような病気や症候群のこと。この場合、約50%の確率で子どもにも変異遺伝子が受け継がれます。
- 常染色体劣性遺伝の疾患
- 変異遺伝子が1つの場合には症状がでないような病気や症候群のこと。両親がどちらもその変異遺伝子を持っている場合に、約25%の子どもにその病気や症候群が起こる可能性があります。
- 小頭症
- 身長や体重に比して頭位が明らかに小さい状態。脳の発育が悪い場合があります。
- 小児科
- 子どもの健康に関する臨床部門。
- 神経科(胎児神経科、小児神経科を含む)
- 神経系の構造や機能、疾患を扱う臨床部門。神経科医の専攻部門。
- 神経管
- 脳や脊髄が形成される元となる細胞の塊。神経管異常(Neural tube defects:NTDs) はこの構造が正常に形成されない場合に起こります。二分脊椎を含む多くのNTDsが知られています。
- 心室
- 心臓に4つある部屋のうち、厚い筋肉に囲まれた下の二つの部屋。左心室は右より筋肉が厚く、大動脈を通して全身に血液を送っています。右心室は肺動脈を通して肺に血液を送っています。
- 新生児
- 出生4週までの乳児を指します。
- 水腫
- 体腔や組織に異常な液体の貯留が起こる状態。胎児水腫とは、胎児貧血などによって起こる、胎児の重症の浮腫を示します。
- 水頭症
- 脳室内の脳脊髄液が異常に増加した状態。胎児や乳児の頭位の拡大が見られます。
- 染色体
- 身体の全ての細胞(赤血球は例外)にある、遺伝情報を格納する円柱状のもの。ヒトの多くは23対(46本)の染色体をもっています。染色体には、1から23までの番号が一本ずつ振られています。例えば、ダウン症候群は、21番染色体が、通常の2本ではなく3本あることによって起こります。
- 先天性(先天的)
- 生まれたときにすでにある病気や状態のことを示します。かならずしも遺伝するわけではありません。
た行
- 胎児鏡(Fetoscope)
- 赤ちゃんを見るための内視鏡のようなもの。局所麻酔で子宮の中にカメラを入れることで、赤ちゃんを観察したり治療したりするのに使います。
- 〇〇低形成、形成不全
- 臓器や組織が何らかの原因で正常な大きさまで発育せずに成長が停止したを意味します。例えば、耳介低形成は見える部分の耳が十分な大きさに育たず、小さいままの状態を指します。
- 転座
- ある染色体の一部分が、異なる番号の染色体に移動すること。
- 頭位
- 赤ちゃんの頭が下にある状態のこと。妊娠30週を超えてくると、この状態でいる赤ちゃんが多いでしょう。
- トリソミー
- 本来ある1対の染色体に、一つ多く染色体が加わった状態。例えば、ダウン症は21番染色体を3つ持つため21トリソミーとも呼ばれます。
な行
- 認定遺伝カウンセラー
- 遺伝性疾患のみられる家系や遺伝性疾患を発症するリスクや受け継ぐリスクのある家系内の人が、遺伝性疾患の性質や、発症や継代の確率、現在の治療などの選択肢などについて助言する専門職。ライフプランニングやバースプランニング、診断やマネジメントのための情報提供もできます。
- 脳室
- 脳の中にある、髄液に満たされた互いに交通する4つの空間。
は行
- ヒグローマ
- 赤ちゃんの首から頭にかけての、袋状の液体貯留のこと。首の後ろに液体が溜まっていることから、NTが厚いことや、胎児水腫(赤ちゃん全体のむくみ)などと混同されて表現されていることもあるので注意が必要です。
- 婦人科
- 女性特有の疾患に対応する臨床部門。
- 〇〇閉鎖
- 身体のなかの管状の臓器が、欠けているか、病的に狭い状態を指します。例えば、十二指腸閉鎖は、小腸の一部が極度に狭く、そのために腸が詰まってしまう状態です。
ま行
- 無〇〇、◯無◯
- 単語の頭や途中に「無」がつくときは、何かが無かったり、欠けていることを意味します。例えば、無頭蓋症(頭蓋骨がない)や、腎無形成症(腎臓がない)、無心体(心臓がない)などがあります。
- モザイク
- 遺伝的に異なる2種類以上の細胞が混在するひと。ヒトの染色体は父と母の染色体が混ざりあって作られます。通常は1対の染色体のセットが1種類存在しますが、体を作る細胞分裂の比較的初期に染色体や遺伝子に異常が起こることでモザイクが生まれます。遺伝的な差異としては点変異や大規模な変異、染色体異常が挙げられます。
- モノソミー
- ある染色体の1対のうち片方が完全に失われている状態。
や行
- 羊水過少
- 羊水が少ない状態のこと。胎児の成長の異常を伴う場合があります。
- 羊水過多
- 羊水が過剰になった状態。早産の原因になり得ます。また、羊水過多があると、胎児になんらかの異常がある場合もある。
A-Z
- MRI(核磁気共鳴画像)
- 強い磁石と電磁波を使って体組織の内部構造を画像にする技術。中枢神経系や筋骨格系の検査に有用。非侵襲的で、放射線を用いません。
- NT
- 妊娠初期のおなかの赤ちゃん(胎児)を超音波検査で観察したとき、後頸部に存在する暗く見える部分のこと。NT自体はすべての胎児に認められますが、この部分が通常の胎児に比べて厚くなっているときは、染色体異常や心奇形などの可能性があると言われています。